いちにち

 母が金曜日に入院した。今日実家に行ってみると母がいる。
「ヲイ、もう退院かい!」
と突っ込みを入れたが、実は外泊で帰宅したとのこと。今夜、病院に戻る。
 だったら月曜日から入院で良いじゃん、と言ったら金曜日に必要な検査を済ませて月曜日には血管造影だそうな。今回の治療方針は読影後に決まるんだろう。
 C型肝炎である。肝がんがポコポコ湧いて出ている。半年から一年おきぐらいに入院して化学療法か放射線治療で退治しているのが現状。もう数年もそんな状態である。
 母は持前の気力で気丈に振舞っているけど衰えてきていることは確かだ。
 今日は父の夕食を作りに行ったんだけど、それに母の夕食を足して作った。芥屋で買った今年の新米を喰わせたら父も母も美味いと言って喜んでくれた。
 母がC型肝炎の原因となる輸血をしたのは私が生まれる前。私の兄か姉になる人を妊娠したんだけど受精卵が着床した場所がちょっと違った。緊急手術となった。麻酔もあまり効かなかったという。子供の頃母と一緒に風呂に入ってへその下にある傷跡を見ていた。それがその時のものだと、聞いた話と傷跡が繋がったのは最近であった。
 母と父はそんな手術の後に私を作った。
 子宮外妊娠の苦痛とろくに麻酔が効かなかった手術の痛みの記憶もまだ鮮明だっただろうにそれでも子供が欲しいと私を作ってくれた。私は両親が望んで生まれたんだと気がついたのはつい数年前。その時はただただ嬉しかった。
 帰ったら携帯メールが届いた。病院に戻った母からだった。「感動した、ありがとう」と書いてあった。
 あれっぽっちで感動すんなよ。母から父から数えきれないいろんなことをしてもらったのに。そんなことでいちいち感動されたら私はどうしたいいの?
 自分もそうだけど父も母も未来永劫に生き続けるわけではない。いずれ最期を迎える。その時に、送る時も送られる時も後悔がないようにしたいなぁと。月並みだけど思ったよ。それが自分に出来る最良のことなんだろうなと。