自炊について

 手持ちの書籍や雑誌をスキャナなどで読み取って電子化(概ねPDF化)することを自炊と称すると聞く。
 私はずいぶん以前から自宅の本の増加には頭を痛めていたんだけど、いよいよのっぴきならない状況になったので自炊を実施することにした。

 自炊するためには本を解体しなければならない。私は、正直本を解体することには抵抗があった。悲しいコレクター根性というか。まぁ本を踏んだらいけない、粗末にしたらいけないと親から教えられた世代だからね。
 だけど、本なんて永久にもつものじゃない。昔買った本は紙は黄ばみ糊の部分が剥がれてきている。あまり読まなくなってきていて本棚に置いているだけの本でもなにもしないのに劣化してきている。最近の本は技術の進歩でもしかすると劣化にはある程度歯止めがかかってきているかもしれない。けど、地獄の果てまで持って行けるわけじゃ無し。(あの世に持ってゆけないのは電子化しても一緒だけどね)
 実際問題、部屋から溢れ寝室の棚を塞ぎ、挙句に寝具の上に散乱し始めたらグズグズ考えてはおられなくなった。本は読みたい。だけど人並みの生活もしたい。
 と言う事で、まず、本を増やさない。出来れば減らす。一冊買ったら二冊自炊という方針で始めることにした。

 あと、もう一つ理由として切実なのは目が悪くなったというか近距離の小さい文字に焦点が合いにくくなったということ。平たく言えば老眼。それに加齢性の乱視が加わって読書がつらいことが多い。文字を大きくしたい。けど、ルーペは嫌だし。リーダか何かで大きな字で電車の中で読みたい。

 で、失敗したらどうしようという思いがあって機材購入を躊躇していたが、今ではむしろもっと早く何で始めなかったんだろという思いが強い。
 作業を始めて5,60冊実施した。やり方と雑感をぼちぼち書いてみた。

対象とする本

 まぁ、文庫、新書。マンガ。他。
 切っていいと。原本残す必要なしと判断できる本は全て。
 まぁ、切りたくないと思われる本は全部対象外だけど意外少ないかも。あと、ハードカバーは表紙がScanSnapでは読めないので取り敢えず却下。表紙だけはフツーのフラットベッドのスキャナで読まなきゃね。

機材について

 自炊をするために絶対に必要な機材は本を電子化するスキャナ、それから本を一枚一枚切り離してゆくためのペーパーカッター。
 取り敢えず上記のモノがあれば作業に着手はできるが、出来上がりを良くするためにフツーのカッターと定規、のりも使っている。
 スキャナはScansnap S1500。

FUJITSU ScanSnap S1500 FI-S1500

FUJITSU ScanSnap S1500 FI-S1500

 S1500は、条件さえ整えば殆ど読み取りミスや走行不良は起こさなかった。
 ペーパーカッターはPlusのこれ。PK-513L。
プラス 断裁機 PK-513L 裁断幅A4タテ 26-106

プラス 断裁機 PK-513L 裁断幅A4タテ 26-106

 垂直に押し切る点、切断されるラインが赤いLEDで細い線となって表示される点が良い。
 一時に切れる最大枚数がコピー用紙で180枚程度なのを多いと思うか少なと思うか。400枚程度が切れるカッターもあったが、こちらのほうが作りがしっかりしているように見えたのでこちらにした。

 S1500もPK-513Lも自炊の場合の定番みたい。

本の解体

 まず、本の解体を行う。

 ジャケットなどはこの段階で取り去る。
 ペーパーカッター(PK-513L)はコピー用紙で180枚程度まで切れるということなのでそれを越える枚数の本は事前に分冊化しなければならない。
 適当なページ位置で本をおもいっきり開く。その状態で背表紙側からカッターで切る。糊の部分を切るのでまぁスルスルと切れる。

 分冊化した本はペーパーカッターにセットして背表紙側を切り取る。切る幅は概ね4mm程度かな。

 本によっては4mmではのりが残ってしまうページが出ることがある。そうすると複数枚が分離されていない状態でそのままScanSnapに突っ込むとバリバリと悲しい音を立ててジャムってしまう。
 これを防ぐのは、切り取る部分の幅を大きめに取るかスキャンする前に元本の紙束を捌いて一枚一枚が分離するかどうかを確認する。残念ながら分離確認は100%確実ではないのでたまにバリバリと悲しい音をたてることがある。その際には少し戻ってスキャンをやり直す。
 分離確認する際に、本の間に挟んでいるものの除去を行う。栞とか新刊案内とかその他。栞替わりに使っていた航空券の半券とか出てきた。紐の栞も確実に除去した方がいい。スキャナの走行系に絡むと悲惨なことになるとおもう。
 あと、ペーパーカッターは紙を切るもの。ホッチキス等を切ると刃を傷めると思われるので必ず除去したほうがいいと思う。

スキャン


 表紙を取り去り、本の本体の部分だけをまずスキャンする。
 基本的に本のページは表表紙に続く一枚目から始まるらしい。扉というのかな。ここにカラーの挿絵とかの折り込みがある場合はどうなるかわからないけど、文庫本は今までのところ例外なくそうだった。見返しがある場合は見返しはページの最初には含まないのかな。
 一度にスキャンできる枚数は60枚程度。大概の本は一度にスキャンできないので数回に分けるかスキャンしている上に続きを足してゆくかする。
 一度にScanSnapでPDF化出来る枚数は1000ページまで。それを超えた瞬間に打ち切られる。超えてしまったら1001ページ目から別ファイルにスキャンする。

 最後までスキャンしたら、ScanSnapOrganizerのビューワで表表紙の次のページを開く。本編を複数回に分けてスキャンした場合にはこの段階で「ページの挿入」機能で繋ぐ。

 で、ページがあっているかを確認する。具体的には表表紙の次のページが1ページ目なのでビューワのページ一覧に表示されるページ番号とスキャンしたページの上か下かにあるもともと印刷されていたページ番号があっているかどうかを確認する。

 合っていればOK。おしまいだけじゃなくて最初とか途中のページも確認すること。あってなければ、原因究明。複数枚同時に行っちゃってる場合もあるし、何らかの原因で落丁している場合もある。

 他にも途中のページが折れてないかとかはScanSnapOrganizerのビューワで確認できる。

 次に表紙をスキャンする。
 文庫とか新書とか、表紙の紙が柔らかければスキャンできる。

 このあたり、本のスキャンに対してどれだけこだわりを持っているかによると思う。再現性をどこまで追求するかだと思う。
 内容だけで良いのであれば前段階でもう完了です。
 私の場合には表紙と裏表紙はスキャンした。

 私は見返しはまぁ何も印刷されていなければスキャンしない。凝った紙を使っていることがあるのでその場合にはスキャンすることもある。
 一応の工夫としては、白黒のページはグレースケールで読み取りを行い、カラーがあるページはカラーで読取を行った。

ジャケットの処理

 本はジャケットが綺麗にデザインされているものが多い。捨てるのは惜しい。だからこれはなるだけ綺麗にとっておきたい。
 本によってはジャケットの折り返しの部分に著者紹介があったり本の情報が載っていたりするがこれを残したかったし、ジャケットの背表紙の部分も最初は捨てていたがそのうち残そうと考え処理をすることにした。
 1)ジャケットの背表紙の裏表紙側にカッターで切り離す。

 2)ジャケットの表表紙側のそでの裏に糊を付け表表紙側の背面にそのまま貼り付ける。
 3)背表紙の裏にも糊を付け表表紙の背面に折りそのまま貼り付ける。


 4)裏表紙の折り返しの裏に糊を付け裏表紙の背面にそのまま貼り付ける。
 5)スキャンする。

 糊付けするのはScanSnapに挿入したときにジャムらないようにするため。のりはスティックのりで十分。ゴムボンドなんかを使うとボンドがローラに付いたら悲惨なことになる。(一度経験あり)
 できたら表表紙側、裏表紙側を別々にスキャンする。

仕上げる

 で、ジャケットと本体をScanSnapOrganizerのビューワで繋いで取り敢えず物は出来上がり。

ファイル名、テキスト化

 ファイル名は面倒なんだけどここをちゃんとしとかないとあとで整理するときに大変なことになると思われるのできちんと付けたほうがいいと思う。特に、大量処理をしようとする人は。
 で、私は「-」をセパレータとして(書名)-(作家)-(出版社/シリーズ名)-(ISBN13).pdfと言うファイル名を作っている。
 ローマ人の物語08 ユリウス・カエサル ルビコン以前[上]-塩野七生-新潮文庫-ISBN4-10-118158-6.pdf
 みたいな。
 写真の例では、
 レヴェレーション・スペース①火星の長城-アレステア・レナルズ-早川文庫SF1630-ISBN978-4-15-011630-9.pdf。
 
 検索可能なPDF化にするもしないもお好きにどうぞ。私はすべての書籍でやっている。結構認識率が高い。

例)上記火星の長城P122

一方で、ラテン語名のサンプルばかりがはいっている引き出しもあった。こちらは地球
から持ちこ萱れた比較用らしい。ロボットはもとになる生体組織をごく少量運んできて、
それを成長させるかクローン培養して、大きなサンプルにしたのだろう。アメリカ人たち
は、将来いつかダィァデム星をテラフォームすることを念頭に、地球産生物の耐寒実験を
していたのかもしれない。

 2箇所、3文字の誤りです。多いと言えば多いけど意味は通じる。

右綴じ左綴じ

 本は基本的には右綴じか左綴じである。上ってのもあるけど基本は右か左。
 何が問題かというと、日本の本の多くは縦書きで右綴じ。雑誌とかに横書きで左綴じがあるけど。少なくとも左綴じは私の持つ本の中では少数派。
 一方、PDF化する場合のデフォルトは左綴じ。
 何が問題かというと右綴じの日本のマンガ本をデフォルトのままで見開きで見るとページの左右が逆になる。
 開く方向が違うから仕方が無いといえば仕方が無いんだけど。
 対応する方法としては出来上がったPDFファイルをAcrobatで開き「ファイル」-「プロパティ」の「詳細設定」タブの「読み上げオプション」の綴じ方を「右」にして「OK」でファイルを閉じるときに保存を行う。

 リーダ側が見開きで綴じる方向に気を配っているものであればこれで対応できると思う。
 Acrobatは対応していたけど、海外他社のリーダはどうだろうか。右綴じの文化がない国や地域で作られたリーダは厳しいかもしれない。彼らにしてみたら右綴じって裏表紙から本を読むことと同義だろうからね。

リーダ

 正直、まだ決めていない。
 カラーがいいな。とか軽いのがいいとか。小さかったら字が読めないなとか。
 こう書いていると絞られてくる。
 GalaxyTabあたりかなとも思うんだけど、iPad2の発表を待つか、とか。
 右綴じ左綴じ問題はリーダ搭載のソフトの問題だからねぇ。

最後に

 私的にはあくまでも自分の為にやった。市販の機材とちょっとした手間で本を電子的に持ち運べるし、蔵書の物理的な量を削減することができる。
 自分の蔵書の物理量からすれば5〜60冊ってほんの一部でまだ減ったという気にはならない。だけど、これはやれるって感じがしている。
 まぁ、もちろんこんなアホな手間隙かけずにいっそ捨てるという選択肢もあるんだけどね。それが出来れば苦労はしない。まぁ、ある意味安心を買うためかな。捨ててしまったらどうにも出来ないけど電子化して残しておけば読みたい時に読めるという。まぁ、そのためだよな。この手間は。

 著作権的に言えば、基本的に個人で楽しむほかは、他者への配布はまずいと思う。個人的にスキャンするのがまずいということはなかろうと思う。
 ただ、一旦PDFになったらコピーして渡すのはやりたい放題。だけど、それをしてしまうと作家さんたちがオマンマの食上げになる。やってらんなくて作家さん達は廃業するしかない。と言うことは好きな作家の文章やマンガが読めなくなるってこと。
 私はそんな事態は望んでいない。
 この文章を公開することにも少し躊躇した。やってみてわかったのは自炊って思いの外ハードルが低いから。
 おめー、こんなの公開して著作権侵害が横行したじゃねーかとか言われたくなかったから。

 けどね。
 実際に本をPDF化するサービスがあって、1冊100円を切ったりしている。そのサービスは予約が引きも切らず×ヶ月待ちという話もある。
 いざ自炊やってみて、何か、電子書籍ってもう目の前まで来ている感があるな。AMAZONアメリカでは電子書籍が売上の半分を超えたとか言ってなかったっけ?
 技術が先行して業界がボケッとしている間に取り返しが付かないことになりましたってのは無しにして欲しい。
 出版社的に本の縦の長さを微妙に大きくして読みやすくしたとか言って喜んでいる場合じゃないよ。

 検索可能なPDF化でかなり精度が上がってきているからePub化とかも注意深くやれば結構簡単にできるかもしれないね。(ボソリ)

 あー、まとまらないけどこれでおしまい。