太陽レンズの彼方へ―マッカンドルー航宙記/チャールズ シェフィールド

太陽レンズの彼方へ―マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫)

太陽レンズの彼方へ―マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫)

 マッカンドルーの母親が登場してくるまで迂濶にも気付かなかった、思い出さなかった。それは結局ジーニー・ローカー船長はマッカンドルーのお母さんなんだということ。
 洋の東西を問わずこういう関係になるのも結構安定するのではないかな。あっちこっちほっつき歩いて厄介事を起こして、だけど当たり前のように帰ってくる。ここではジーニーが船長なんだけど、マッカンドルーにとっては実は港でもある。帰る場所はそこしかない。
 所詮、男。女性の掌の上で遊んでいるだけ。時たま、ジーニーにころころと転がされて。
 世の男もそんなもので、あまりやかましいことを言わなければ男は帰るところを求めてそこに帰ってくるんだろうな。
 西洋は父性の勝った世界であるように言われていたし、そう思ってもいたけど、どうしてどうして母は強いのぉ。
 この物語、著者が物理学者だけあって物理学的な大道具、小道具もすごい。太陽を利用した重力レンズ?まいりました。局所的な強い力の操作?カーネル?等など。
 現実の物理学に物語的な要素を加えて、そこでこの二人が踊る。はまってしまいました。このまま行くとこの二人は他の恒星系に行ってしまう。その物語を楽しみにしていた。

 この本のあとがきで著者のシェフィールドが鬼籍に入っているのを知った。
 マッカンドルー博士とジーニー・ローカー船長の物語をこれ以上読むことは出来ないのは残念でならない。

 この本、別に新刊書と言うわけではない。
 まだまだ読んでいない物語で面白い物語はたくさんあるんだろうな。