ガンジスの沐浴

ガンジスで沐浴をやったのを思い出した。きっかけはCOCOさんのところで水に浸かる話をしていたから。寄生虫だの微生物だのと言うことであの川を思い出した。久しぶりのトラックバックだ。
あの時はまだインドでのボランティアはやっていない時分で、ネパールに入る前に一泊してインドに行ってまぁ観光と言うか見聞を広めると言うか、のためにインドのバラナシに入った。バラナシは以前はベナレスと言われていたのをご存知の方もいると思う。
夜のうちにリクシャに乗ってガンガーの船着場(?)で行われている祭りを見た後、女性陣はガンガーに浸かるときに使うサリーやパンジャミを買いに行っていた。女性陣が慌ててサリーを買いに行ったのはインドに入ってからガンジスで沐浴するからね、と言われたから。男性陣はいい加減でいいので、私は寝巻き代わりに持っていっていた短パンとTシャツで行くことにした。
躊躇しなかったか?と言えば躊躇したよ。うわさに聞くガンジス川だから。ばばっちいって言われているから。だけどね、せっかくインドのバラナシまで来て入ってゆかなかったら次ぎいつ来るかわからないわけだし、後悔するだろうなと思ったわけです。現にこれ以来行ってないしね。
朝は日が昇る前に集合でバスに乗ってガンガーの近くまで行って、そこから歩いてガンガーに行った。
ガンガーでは手漕ぎの船で沐浴できる場所を探す。なるだけ汚くないところと言う条件。
船には他の使い方もある。ガンガーはいろんなものが上流から流れてくるので舟を盾にしてそれを防ぐとか。まあ、喫水が浅い船なので船の下をくぐってくるものに対してはまったく対応できないんだけど、気休めぐらいにはなる。緑色のモワモワした藻の塊みたいなものなどは除けられる。それでも汚い。なにせすぐ上の火葬場でやぐらの火が燃えていてそこで遺体を燃やしている。やぐらの火ぐらいで人間の遺体は燃えつきることは無くてレアに近い状態だという話。やぐらが焼け終わったらそのまま母なるガンガーへザブーンと落とす。水に浸かる場所は火葬場よりかなり下流だけど下流だから流れてくる。
で、準備万端でひとりずつ水に浸かり頭まで浸かっていった。岸の石の段を降りていって最後は頭のてっぺんまで浸かる。やがて、私の番が着た。足元は苔でぬるぬるしている。一段一段が高くて確か4段か5段で足元は柔らかいガンガーの泥を踏んでいたような記憶がある。あまり気持ちが良いものではなかった。肩まで水に入った状態で意を決して頭まで浸かる。口と目に入ってこないように力いっぱい閉じる。少しの間、頭まで浸かっていたがやがて頭を上げて船の上に上がる。インドとは言え早朝に水に浸かると寒い。ホテルから持ってきたバスタオルをかぶる。
やがて、全員が沐浴を終え、船着場で船から下りる。
バスが停まっているところまで歩く途中でチャイと甘い揚げたお菓子を食べた。美味しい。チャイは素焼きのコップもどきに入っている。浅い円錐形なのでテーブルなどに置くことはできない。暖かいチャイを飲んだおかげでだいぶ温まってきた。
木の車が付いたスケボーみたいなものに乗った両膝から下が無いお乞食さんが木の車をゴロゴロ言わせながら寄ってきて手を伸ばす。
ホテルに戻ってガンガーの水を吸った短パンとTシャツ、下着を脱いでビニール袋に入れ、シャワーを浴びた。シャワーを浴びながら水に浸かったことを思い出していた。
今でも覚えているのは水に浸かる直前に力を入れて目を閉じたこと。そして水中に入ったら水の中の様子や足元の様子が見えていたこと。ふわふわと水中を漂う小さなゴミや藻。そして足を動かすと巻き上がる水底の泥の様子。今でも脳裏に浮かぶ。目を閉じていたのに何でだろう。
ホテルでビニール袋に詰めたガンガーの水を吸った短パンやTシャツだけど、1W後に日本でスーツケースから出して開けてみたところ、物凄いカビのにおいがしていた。まぁ、暖かい地方で密閉された袋の中で1週間だから思いっきり生命活動が営まれていたんだろうと思う。だけど、大概じゃなかったような気がする。あの生物に満ち満ちた母なるガンガーの水中は。