光の塔/今日泊亜蘭

読了。

光の塔 (ハヤカワ文庫 JA 72)

光の塔 (ハヤカワ文庫 JA 72)

過去に読んでいたと思っていたけど、もしかすると途中までしか読んでいなかったかもしれない。終わりがけの侵略者と水原大佐のやりとりの部分以降が記憶に無い。
文体が少し独特なのと使われている漢字やら単語が古いこと、それに日本語の中にアルファベットがまるでちいさい「つ」みたいな使われ方をしているので慣れるまではちょっと読みにくい。けど、文章自体は日本的できれい。
ちょっと江戸っ子が入っている古い文章を読んでいる感じがする。例えば「夢酔独言」や「氷川清話」など。ああ、勝さんの本が読みたくなってきた。勝さんの全集か何かあれば欲しいな。
今のSFばかり読んでいる人が読むと若干違和感があるかもしれない。出てくる道具立ても古いものが多い。大正、昭和の初期をそのままSFの世界に乗せたような感じがすす。
僕は嫌いじゃない。

「入らっしゃいまし」
 とかれは言った−オオ、何という美しい言葉だろう!たとえ一介の古俗語であっても、なおかつ使い道や礼儀作法が情感のニュアンスとともに精緻明確に表現されていた当時の言葉:わが祖父母や維新の詩人たちが語っていた言葉だ。きょう日の若い者の言葉ときた日には、作法も語法もあったものではない。なんでも助辞や語尾をぬいて早く済ますのが文明なんだと心得ているらしい。

今日泊先生、ごめんなさい。

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