戦国軍師の合戦術 小和田哲男

読了

戦国軍師の合戦術 (新潮文庫)

戦国軍師の合戦術 (新潮文庫)

軍法者、軍配者、参謀、神頼み。呼び方はいろいろある。帷幄で謀を巡らしたり、あるいは呪い調伏など超常的な力を用いて戦いを優位に進めようとする人たち。
彼らと戦国大名たちの関わりを描く。
神頼み的な軍師たちのすることは今の時代からすれば迷信等と言う言葉で片付けられそうだけど、因果関係を持つと信じられていれば語呂合わせまがいの話も通る。
それらに振り回されたり、うまく利用したりして付き合っていた人々。
今より死は遥かに近くにあるから。
神頼みのイメージとして印象が強いのはNHK大河ドラマに出てきた加納随天。平幹二郎が演じた実在ではない人物。ドラマを通じてうざいなと思っていた。ラストの本能寺では主君信長が自害するための時間稼ぎをするために光秀側の弓箭に身を曝すがこれが死なん。第六天魔王の配下の如くに死なん。
あまりのおどろおどろしさに私は嬉しくなってテレビを見ながら笑ってしまったよ。
思うに彼は合理主義的路線をひた走る信長の影の如き存在であったのではないかな。物語の終わりがけに信長自身が神憑って行ったときに彼はその力を失いかけ、信長が滅びの淵に立ったときに彼は昔日の力を取り戻し第六天魔王の化身として主君のために力を奮ったのではないかと。
あの姿こそ、あの時代の現実世界と表裏をなしていた日本人の精神世界ではなかったのかと思ったりする。まあ、10年程度昔の大河ドラマなので私の記憶に瑕疵があるかもしれない。
だけど、平幹二郎演じた加納随天はよかったと今はおもう。

この本がお気に入りなのは九州戦国史が随所に取り上げられているところであろう。
大友方による高城攻めから小丸川河畔周辺での合戦。耳川の戦い
高城は台地状の地形が小丸川添いに平地に貼り出し、数十メートルの急峻な断崖を形成している。
後方の台地からの道は狭隘で数本の深い空堀で切られていて、守るに易しく攻めるに難しい。

あと、立花道雪こと戸次鑑連の気合いの入ったエピソードなどあって、楽しめた。
これは聞いた話だけど、戸次鑑連は戸次道雪とは名乗っても立花姓は自分では使わなかったと聞いている。立花姓は主筋の姓なので家来に過ぎない自分は使わなかったと言うことらしい。

九州戦国史からはもうしばらく離れていたが久しぶりに萌えた一冊だった。

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